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2013年11月 8日 (金)

やさしいライオンの魂

 少し前に注文していた絵本『やさしいライオン』が届いた.
 早速ページをめくったが,半分読んだところで,もう目頭が熱くなってしまった.

 犬でも猫でも,飼うならば自分の家族のように愛したい,長生きして欲しいと願う.それが普通の人間の感情のように私には思われるが,しかし現実にはそうでない人達があまりにも多いので,驚くほどの数の犬猫達が毎日殺処分されている日本の現状があるわけだ.

 前の記事で,私は絵本『ずーっと ずっと だいすきだよ』について「お金をドブに捨てた」と書いた.主人公の少年とその家族が飼い犬の健康に無頓着だったのは,結局のところその犬を愛していなかった,長生きして欲しいと思っていなかったのだと思うからだ.口で飼い犬に「好きだよ」と言うだけなら簡単だ.ところが少年は,無責任に「好きだ好きだ」と犬に言い続けたことで免罪符を得て,その犬が死んでも涙を流すことなく,また他の何かを飼おうと思うに至った.この少年とその家族は,生き物に対する優しい気持ちと遠いところにいる.
『ずーっと ずっと だいすきだよ』の原作者はドイツ人であり,ドイツは動物愛護にかけては日本より先進的だと聞いているが,この絵本をドイツ人が買って読んだらどう思うだろう.やはり金をドブに捨ててしまったようなものだと怒るのではなかろうか.

 やなせたかし画伯逝去の報に,あの口の悪い西原理恵子さんがしみじみと追悼のコメントを寄せていた.『毎日かあさん』にもそれを描いていた.やなせたかしという人は,よほど優しい人柄であったのだろう.
 やさしいライオンが,育ての母である犬と共に理不尽で悲しい死を迎えるかと思われた寸前,作者が物語の結末に描いた二枚の絵によって,その理不尽は優しく昇華された.
『ごん狐』では理不尽が理不尽のまま終わるが,『やさしいライオン』には作者の人柄が反映されているように思う.

 幼い子にこの絵本を読み聞かせるお母さんは,「どうしてやさしいライオンの足跡は途中で消えていたんだと思う?」と子に問いかけて欲しい.絵本でありながら,この足跡のことはまるで小説のようなエンディングであり,大人にも難しい質問だから子供には答えられないだろうけれど,答えられなくてもその子を抱きしめてあげて欲しいと思う.作者は,お母さんに『やさしいライオン』を読みきかせてもらった子が,いつかまた大人になってから読み直して「ああ,そういうことだったのか」と理解してくれるよう望んでいたのだろう.

 こうして『やさしいライオン』は私の涙腺決壊コレクション入りした.

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