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2013年10月29日 (火)

社長辞任

 私は先月30日早朝にアップした記事『旅路の果て』で,JR北海道について以下のように書いた.

《野島社長は自らの進退問題について「先頭で立て直しに当たっていきたい」と辞任の可能性を否定したが,これまでの類似の企業不祥事では社長が「先頭に立って再建をすすめる」と言明したのちに結局は辞任に追い込まれた例が多い.
 前社長と交代のあと,野島社長が本当に先頭に立っていたならば(野島社長が鉄道人として有能だという仮定のもとではあるが),こうはならなかったわけで,リーダーシップのない社長が再建に取り組んだために余計に傷が深くなる前に,自力再建をあきらめてJR他社から社長を迎えた方がいいような気がする.》

 この日の午後の新聞で,政府はJR東日本などからの人材登用を視野に入れて野島社長らJR北海道経営陣を刷新する方向の検討に入ったと報じられた.
 野島社長ら経営陣は,レール異常の放置は保守現場の怠慢であり,経営陣はその事実を知らなかった,と主張したが,これが経営者として致命的であった.現場が何をしているか知っているのが経営者であり,知らなかったら,それは経営者失格なのである.この社長の責任転嫁,誰が聞いても事実とは思われぬ言い訳が,政府をして野島社長更迭を決断させたと思われる.

 さて私は昨日の早朝にアップした記事『パンの話のついでに』で,《言い訳を続けていると,必ずや経営者の進退問題に至ることが,これまでの企業不祥事で得られた経験則である.》と書いた.

 案の定,昨日の夜の記者会見で,阪急阪神ホテルズの出崎弘社長は,同社の社長および親会社の阪急阪神ホールディングス取締役を辞任すると発表した.「偽装ではない,誤表示だ」などという子供じみた言い訳がもたらした結果である.
 出崎社長は,中国産蕎麦粉を使用した蕎麦を「信州蕎麦」としたことや,バナメイを「芝エビ」としたこと等を「偽装ではない,誤表示だ」,すなわち意図的行為ではなく単なるケアレスミスであると強弁したものの,記者会見でマスコミの追求に窮して再調査と記者会見を約束させられ,昨日に至って遂に観念したものである.(そもそも「誤表示」はこんな場合に使える用語ではないのだ.「社長,その強弁はどう考えても無理です」と進言するスタッフはいなかったのか)
 同じく阪急阪神ホールディングス傘下のザ・リッツ・カールトン大阪も,これ以上同じ言い訳を続けると,阪急阪神ホテルズと同じ轍を踏むことになるであろう.

 かつて平成十二年頃,食品業界で偽装表示などの不詳事が相次いだ時,大手食品企業の社長達は,危機管理を専門とする企業コンサルタントによる訓練を,こぞって受けたものである.
 その訓練の一つに模擬記者会見があった.コンサルタントがマスコミ報道陣の立場で社長を追求するのである.故意に罵声を浴びせながら質問を続け,進退窮まった社長が「現場が勝手にやった」「私は知らなかった」等と言ったら,それで零点の落第となる.
 経営者は,不正があれば潔く認め,そしてその責任を一手に引き受け,決して言い訳してはならない.その上で会社の欠陥をどのように改善するか,立案した対策を世間に公表して訴える.これが鉄則である.
 私はその当時から定年まで,万が一会社で不正が発生した時に改善対策を立案するポジションにいたので,忘れられつつあるかも知れないこの鉄則をここに書いておきたい.

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