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2013年10月26日 (土)

エビ高騰のニュースから脱線して

 天丼チェーンの「てんや」は,「上天丼」「海老天そば」など,海老天が二本入ったものの販売を10月21日から休止した.
 タイ,ベトナム,インドネシアなどで養殖されているバナメイが早期死亡症候群(Early Mortality Syndrome;EMS)と呼ばれる魚病の発生で大減産となり,その代替需要でブラックタイガーが品薄になったためという.
 他の飲食店や加工食品メーカーにもその影響が広がるものと憂慮されている.

 そこでネット上では,カルビーの「かっぱえびせん」はどうなる,という心配の声で一部が盛り上がっているという.
 Wikipedia によると,かっぱえびせんは
《原料として使用されている小エビは当初は瀬戸内海産だったが、現在はグリーンランド近海・中国・日本産のアカエビ・サルエビ・キシエビ・ホッコクアカエビの4種類で、製造時の漁獲量によって種類ごとの割合が変化する》
であり,しかも同社自身の手で水揚げされているから,今回の養殖エビの価格高騰とは関係なく原料調達は安定しているとのことである.スナック菓子好きには一安心というところか.

 さて,えびせんとは無論エビせんべいのことだが,エビせんべいは愛知県は知多半島あたりの名産品である.
 この知多地方のエビせんべいでよく知られているのは,デンプンを主原料とした直径3cmほど&厚みが1mmくらいの軽い食感のもので(ただし有名な坂角総本舗のエビせんべい「ゆかり」は,普通のエビせんべいと違って噛めばバキバキいうほど硬い独特の風味の菓子だが),その焼き上げた表面に干しサクラエビのような小エビが張り付いていたりする.
 私は以前から,この知多地方名産エビせんべいの原材料はなんだろうと思っていた.
 それでカルビーかっぱえびせんの原材料を知ったついでに,この小エビについても調べてみた.

 Wikipedia 【海老煎餅】にはこうある.
《この地域で獲れながらも食用の需要が無く一部は乾燥加工され清(現・中華人民共和国)に「カジエビ」という名で輸出されていた「アカシャエビ」・「アカシエビ」と呼称されるエビを使い》
《愛知県が生産量日本一・日本国内シェア約95%となっており、三河地方と知多地方が主な生産地で、その中でも西尾市一色地区が全国シェアの約60%を生産している。現在では、原材料の海老について多くを輸入に頼っている。》
《海老満月(筆者註;海老煎餅の一種の名称) - 乾燥エビをそのままの姿で使用。海草をあしらい一つの世界を作る。丸に成形されることから海老満月と称する。》

 上に書いた普通のエビせんべいは海老満月といい,アカシャエビはサルエビのことらしい.サルエビは同じく Wikipedia に
《十脚目クルマエビ科に分類されるエビの一種》
《日本の大部分を含むインド太平洋の熱帯・温帯域に広く分布するエビで、食用や釣り餌に利用される重要産業種である。》
と書かれている.
 なるほどね,知多半島のエビせんべいの原材料はサルエビであったか.
 老舗の坂角のサイトにも,原材料表示は記載されていないのであるが,一応素材として使用しているものの記述はあり,以下のようである.

海老;三河湾,瀬戸内海やニューギニア島近海 (アカシャエビを使用)
桜海老;静岡県駿河湾産
車海老;九州・沖縄県産

 さすが老舗.「ゆかり」にはちゃんとエビ,それも車海老や桜海老を使っている.
 でも Wikipedia【海老煎餅】の《原材料の海老について多くを輸入に頼っている》がどうも気になるので,さらに調べると,三河屋製菓というメーカーのサイトに商品名「えび満月」の原材料が表示されていた.以下に引用する.
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原材料
でん粉(じゃがいも、さつまいも、コーン、緑豆、タピオカ)、小麦粉、植物油脂、えび、砂糖、寒梅粉、落花生、しょうゆ、いか、あみ、食塩、米粉、みりん風調味料、ごま、でん粉分解物、いわし(煮干し)、あおさ、わかめ、果糖ぶどう糖液糖、海産物エキス(かつお、えび、こんぶ、おきあみ、あさり)、還元水あめ、風味原料(かつおぶし、こんぶ、煮干し、しいたけ)、のり、粉末油脂、醸造酢、たんぱく加水分解物、酵母エキス、みそ、乳糖、みりん、ぶどう糖、魚醤、乾燥鶏卵、加工デンプン、調味料(アミノ酸等)、着色料(アナトー、紅麹、カラメル、パプリカ色素、クチナシ、ラック)、膨張剤、乳清焼成カルシウム、香辛料、甘味料(ステビア、甘草)、炭酸カルシウム、酸化防止剤(ビタミンE)、酸味料、塩化カルシウム、乳化剤、香料(原材料の一部にさば、りんご、ゼラチンを含む)

原料原産地/えび(日本、アメリカ、豪州、カナダ、オーストラリア、中国、他)
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 やたら食品添加物を使っているのはさておいて,これには「あみ」が使われてはいるものの,使用量ではエビの方が多いことが分かる.

 ちなみに「あみ」とは,Wikipedia【アミ】によると
《アミ(糠蝦、醤蝦)は軟甲綱 真軟甲亜綱 フクロエビ上目 アミ目 Mysidaに属する小型甲殻類。・・・全体としてエビ類に酷似した外見であるが、アキアミのような小型のエビ類やオキアミとは分類学上異なるグループに属する。一般には「イサザ」「イサダ」とも呼ばれる。ただし、この呼び名も、例えばツノナシオキアミのようなオキアミ類などに使われる場合があるので注意を要する。》
である.
 もう一つちなみに,オキアミは同 Wikipedia【オキアミ】によると
《オキアミ(沖醤蝦)は、軟甲綱 真軟甲亜綱 ホンエビ上目 オキアミ目に属する甲殻類の総称。形態はエビに似るが、胸肢の付け根に鰓が露出することなどで区別できる》
である.

 さあ三河屋製菓の「えび満月」の「あみ」はアミかオキアミかがわからない.どちらもエビではないのでどうでもいいが,表示が正確ならばアミなのであろう.

 ここまで調べて,知多地方の名産エビせんべいの原材料は,カルビーかっぱえびせんと似たようなものだなと納得した.ただしかっぱえびせんは,知多地方のエビせんべいの一部と異なり,原材料が小麦粉,植物油,でん粉,えび,砂糖,食塩,膨張剤,調味料(アミノ酸等),甘味料(甘草)であり,アミは入っていない.

 昔なら,これだけ調べるのにどれほどの手間と時間が必要だろう.インターネットとはありがたいものだ.
 と思った直後に,楽天でこんな記述をみつけた.
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光栄堂 あみ満月えびせん
 愛知県の海に囲まれた知多半島で焼きあがったえびせんべいです。あみ満月えびせんべいは、ツノナシオキアミという小さなえびを丸ごと練りこんだ、えびせんべいです。ご家族で楽しんでいただける食べきりサイズにしました。
成分表
 馬鈴薯澱粉、えび、ツノナシオキアミ、食塩、植物油(なたね)、アオサ、水飴、酵母エキス、砂糖、唐辛子、調味料(アミノ酸等)、甘味料(ステビア)、着色料(アナトー)
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 上に《三河屋製菓の「えび満月」の「あみ」はアミかオキアミかがわからない.どちらもエビではないのでどうでもいいが,表示が正確ならばアミなのであろう》と書いたが,たぶん三河屋製菓「えび満月」の「あみ」も,表示が間違っていて,アミではなくツノナシオキアミ(オキアミの一種)なんだろう.これで一件落着だ.よかったよかった.

 と思ったら,今度は「かっぱえびせん」は何故「かっぱ」なんだということが気になってきた.昭和の著名な漫画家であった清水崑の『かっぱ天国』のキャラを使った,カルビー創業の頃の商品「かっぱあられ」に由来するものだというところまではわかったが,それでも何故あられに「かっぱ」と名付けたのかがわからない.ただの社長の思いつきだったのか.気になって夜も眠れない.私ゃ鳳啓助か.

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