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2013年10月31日 (木)

景表法拡大解釈

 おそらく今,食品企業の品質保証部門は愕然としているはずである.
 昨日の毎日新聞(毎日JP 10月30日18時50分掲載)によれば,名古屋観光ホテルの直営レストラン「ジャルダン」「エスコフィエ」「ル・シュッド」の三店が,牛脂を注入した「牛肉ステーキ」「シャリアピンステーキ」について,これまでメニュー上で加工肉であることを表記していなかったとして,これが景品表示法の「優良誤認」にあたるという重大な新解釈を消費者庁が打ち出したからである.

 景品表示法第四条および第六条は,「商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示をした場合」,および「商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示をした場合」,ならびに「前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示をした場合」において,「内閣総理大臣は、事業者がした表示が前項第一号に該当するか否かを判断するため必要があると認めるときは、当該表示をした事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求め」,当該事業者が当該資料を提出しないときに,これを不当表示(優良誤認)にあたるとして,改善の措置命令を発出すると定めている.

 すなわち,加工肉であることを表示「しなかった場合」は同法第四条に抵触しない.これが料理店で加工肉を使った料理が,法外な値段で提供されても野放しになってきた理由である.
 当然のことながら料理店は,低品質の食材を使用した料理について不当に高い価格設定をすべきでない.しかしながら,これを規制するならば,それは法に基づいて規制されるべきである.それができない場合は,消費者の自由な選択,あるいは業者間の正当な競争によって淘汰されるべきである.それが当然ではないか.
 今回消費者庁は,名古屋観光ホテルに対して,手続きに時間を要する措置命令を出さずに,景品表示法に抵触する「おそれがある」と口頭で通知して改善指導をしたと思われる.すなわち優良誤認の意味するところを,「優良であると誤認させる表示をすること」から「優良でないことを表示しないこと」へと拡大解釈を行った.
 このことが何故法の重大な新解釈かというと,上に述べたことは景品表示法についてであるが,成立したばかりの食品表示法においても今後,法令の改正をせず,また法の解釈に係るガイドラインも制定せず,水戸黄門の印籠のように「おそれがある」と食品事業者に口頭で通知することにより,消費者庁の考え一つで恣意的な運用がなされるであろうことが容易に予想されるからである.

 目的が正当であっても,それは手段を正当化しない.「目的のためには手段を選ばず」を許せば国家が成り立たない.
 私は,今は食品業界を離れたが,かつて食品企業の技術者であった.その経験を振り返れば,これまで厚労省も農水省も,きっちりと法に基づいて業界の指導を行い,業界はその指導に従ってきたといえる.
 しかるに,厚労省と農水省に代わって食品表示法で食品の表示に関する権限を握った消費者庁は,これまでの行政と事業者の信頼関係を瓦解させようとしている.これを許せば,いずれ消費者庁の目的である消費者の保護は,目的に反して土台から崩壊するであろう.
 正しい目的は,正しい手段よって達成されねばならぬ.それが国民の利益に適うと私は考える.

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