ごんぎつね
小川洋子さんの『とにかく散歩いたしましょう』に『フィレンツェの赤い手袋』というすてきなエッセイが収められている.イタリア旅行の折に手袋専門店で買い物したときのお話である.
その中に《新美南吉の童話『手ぶくろを買いに』の子狐も、こんな気持だったのだろうか》という一行がある.
『手ぶくろを買いに』(南吉の童話は「手袋を買いに」)を,私は小学校の国語教科書で読んだ.何年生のときかは忘れたが,この童話そのものはよく覚えている.
新美南吉の作品でもっともよく知られているのは,この『手袋を買いに』と鈴木三重吉が子供用に編集した『ごん狐』のように思う.
『ごん狐』を読んだのはいつのことであったか,これも忘れた.たぶん国語の教科書で,だったろう.
『ごん狐』が最初に小学校国語教科書に採用されたのは1956年の大日本図書の国語教科書で,次は1968年の日本書籍と東京書籍だというから,私が読んだのは大日本図書の教科書に載ったものだ.挿絵はあったろうけれど,全く覚えていない.
私の書架には,絵本は一冊しかない.私の子供達が小さかった頃はそれなりにあったのだけれど,みなどこかにいってしまって,残っているのは岩波の『ちいさいおうち』だけ.
それでふと『ごん狐』の絵本はどんなのがあるかなと Amazon で探してみた.そして表紙のサムネイルを見ただけで,一発で参ってしまった.黒井健さんの『ごんぎつね』に.その場で注文して,それが今日届いた.包装の袋から取り出し,しばらく表紙を眺めて,ああ,よい買い物をしたと思った.
黒井健さんの原画展「画業40年記念 黒井健 絵本原画の世界展~物語との出会い~」が阪急うめだギャラリーで開催されている.月末の30日まで.大阪になんの用事もないのだけれど,行きたい気持ちが抑えられない.
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