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2008年12月24日 (水)

北方『三国志』(二)

 出張先での仕事を終えて博多駅に戻ってきたのは午後四時だった.福岡空港から東京行きの便は18:45なので,暇がたっぷり二時間はある.そこで同行した同僚二人と軽く飲むことにした.二人とも明日は北九州市で用事があるので,こちら泊まり.二つ返事でそうしようということになった.
 博多駅の地下街に降りて和食屋に入り,品書きを見ると芋焼酎で『赤兎馬』てのがあった.同行の二人を相手に,呂布と赤兎の物語についての蘊蓄たれつつロックで三杯飲んだ.大きなグラスになみなみと注がれていて,これがとても安い.高菜の辛子漬,板わさ,がめ煮,ざるに掬った豆腐を肴に頼み,焼酎ロックが都合六杯に熱燗三本で,三人様お会計が五千六百円.うむ安い.

 帰りの機中で北方『三国志』第五巻を読む.巻末に近いところで晩年の赤兎馬についての話があった.
 鮮卑東部白狼山に烏丸族を追撃していた曹操の陣に,劉備を師と仰ぐ馬飼いの洪紀が訊ねてくる.白狼山麓は広大な牧場であり,ここに兵を入れないでくれというのである.もし進軍するなら自警軍を出すといった.
 その軍を率いているのは誰かと問うた曹操に,洪紀は成玄固であると答えた.成玄固はかつて劉備に仕え,曹操が呂布を包囲した時,傷ついた赤兎を死なせないでくれとの呂布の最後の望みを聞きいれ,赤兎馬を連れていずこへか去った武将であった.
 曹操は洪紀に,成玄固に会いたいといい,洪紀が案内したその場面.

《「赤兎馬も老いたであろう、成玄固?」
 「はい。人の歳で測れば、もう老人でございます」
  …
 「成玄固殿、礼を申します」
  張遼が出てきて言った。
 「赤兎が死ぬことを、呂布様は恐れておられました。
  ここまで長命を保つとは、赤兎と別れても呂布様
  にとっては本望でありましょう」
 「張遼殿、赤兎は死にません。われらの心の中で、
  決して呂布様が死なぬのと同じように」
 「そうか。そうだな。赤兎は死なぬ」
 「もうよい」
  曹操が口を挟んだのは、羨ましさに似た感情に襲われたからだった。
  自分がどこかの戦場で果てたとして、心の中では生き続けている、
 と言ってくれる人間が何人いるのか。》

 赤兎馬は三頭の子をなしたという.そのうちの一頭の運命は知っているが,あと二頭はどうか.詳らかにされるのだろうか.

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