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2008年11月16日 (日)

黒はんぺん

 最近,新聞紙上でいわゆるB級グルメの話題を目にすることが何度かあった.毎日新聞(11/11 朝刊)には,先日,久留米で開かれたB級グルメの催しが紹介されていた.この催しには日経新聞の『食べ物新日本奇行』が事の始まりから関わっているのだが,ようやく他紙も記事に取り上げるようになったようだ.
 今年の大会には静岡おでんが参加した.静岡おでんは,地元では静岡おでんと呼んでいるわけではない.ただの「おでん」である.静岡市周辺の人々は自分達の日常の色々なものごとが日本全国的なものであると思っているフシがあり,例えば歴とした静岡方言を共通語だと理解していて,大学に入って上京して初めて自分の言葉が方言であると知って驚いたりする.だから静岡の生まれ育ちの人が関東や関西のおでんを食べたらやはり驚くのではないか.

 静岡おでんが世に知られたのは,秋葉グッズの「おでん缶」が最初だと記憶している.ラオックスが売っていたのは萌えキャラが描かれたプルトップ缶で,これは旧清水市(現静岡市)の缶詰屋さんが委託製造した関係で,中身が静岡おでんだったのである.
 静岡おでん独特のおでんダネが黒はんぺんだ.地元の人間はこれを単に「はんぺん」とか「はんべ」といい,紀文あたりが売っているのは白はんぺんと呼んでいる.本来の「はんぺん」は黒はんぺんだと思っているのである.ほんとは黒はんぺんはツミレに近い魚肉製品の一種であって,はんぺんと呼ぶのはいささか強引のように思われるのだが.

 さて話は黒はんぺんの美味しい食べ方である.
 黒はんぺんは主としてイワシを材料とするため,どうしても若干の生臭さがある.煮るとその生臭さが強調されてしまい,人によって好き嫌いが生じる.
 生臭くしないための方法は,一つには焼くことである.焼くと風味がよくなるのだ.そして生姜醤油がぴったりである.日本酒のあてに格好.
 もう一つはフライである.静岡市周辺の飲み屋では,黒はんぺんのフライは定番といってよい.私もフライが一番好きだ.季節であれば蓮根も一緒に揚げてもらうと,その揚げ物一皿で焼酎のロックが何杯でもいける.安くて満腹で大変によろしい.黒はんぺんの食べ方は一にフライ,二に焼いて生姜醤油.おでんに入れて煮たものがうまいとはとても思われないと言われている.誰が言っているかというと私だ.
 地元の人にはほんとに製造直後のものが手に入るので,これはそのままワサビ醤油で食べても美味しい.Wikipedia『黒はんぺん』もそう言っている.
 昔は黒はんぺんは他所では手に入らなかったものだが,近頃は神奈川,東京でも目にする.ネット販売もされている.

 ちなみにWikipedia『はんぺん』では《「はんぺん」の名の由来、駿河の国起源説にせよ、半月型が由来説にせよ、この黒はんぺんを連想させる》として,黒はんぺんが元もとの形であるといっているが,そうとも思われない.関東では鎌倉の井上蒲鉾が有名であるが,その明治十一年創業の本家である大磯の井上蒲鉾店では,芋や卵をつなぎに使わず,白身のいしもちの身で独特の歯ざわりのはんぺんを作っている(お店のウェブサイトにある写真は四角いものであるが,以前は黒はんぺんと同じ半月形のものがあったはず).本来のはんぺんはこういうものだと言われている.誰が言っているかというと私だ.

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