ガン見おじ

　東京メトロの社内広告「○○でやろう」シリーズに登場するキャラクタはネット上では「ガン見おじさん」とか呼ばれているらしい．このあいだ銀座線構内を歩いていたら，前を行く二人ずれの女子高校生がガン見おじさんを「かわいい」と言っていた．うん，あれはいいキャラだね．今までのでは「山でやろう」のガン見おじさんが好きだ．

混乱

　東京工場(千葉県柏市)で製造に使用していた地下水のシアンが基準値を超えていたために製品の自主回収をしている伊藤ハムのウェブサイトを閲覧してみた．すると回収広告一枚を残して，これまでのコンテンツがすべて閉鎖されていた(10月28日現在)．
　これはまずいのではないだろうか．きちんとトップページを残し，初めて訪問した消費者にも分かりやすいようにその上段のレイアウトから，回収(お詫び)広告，事態の経緯公開，当該製品の詳細情報へリンクを張り，あとは通常公開しているコンテンツを残すべきであると思う．皆が皆，回収広告を見に来るわけではないからである．
　これは広報責任者の問題ではなく，経営者の情報公開というものに対する意識が冷静さを失っていることを示している．社内の混乱ぶりが目に見えるようだ．

目線

「目線」という俗語が一般に広まったのはいつごろだろう．私が若い頃にはなかったような気がする．辞書(大辞泉)には

《映画・演劇などで用いる語から》視線のこと。「―が合う」「―をそらす」

とある．印象としてはタモリなどのテレビ芸人が流行らせたような気がするのだが，どうだろう．
　辞書的には目線＝視線でも，これが例えば「消費者目線」になると「消費者感覚」等と言い換え可能に思われ，「視線」とも演劇用語の「目線」とも少しニュアンスが違うのではないだろうか．というのは，こんにゃくゼリーのために各地で起きている窒息事故に関して10月16日に関係省庁で「消費者安全情報総括官会議」が開かれ，その資料文書中に次のような文言があるからである．

《特に、形状及び物性等の改善については、消費者目線から検討を進め、年内を目途として、再発の防止につながる実効的な改善策を講じるよう求める》

　これは「消費者の立場から」とか書けば済むのではなかろうか．行政文書中に「目線」と書かれると違和感を覚えるのは私だけか．

ポンヌッフ

　このところ毎週のように休日出勤している．
　昨日はゆっくり家を出て新橋駅を降りたのが11時過ぎだった．昼飯には少し早い時刻だったが，地下鉄に乗り換える前に立ち食い蕎麦でも食っていこうと考えた．というのは，新橋駅銀座口を出てすぐ左側，外堀通りに面した場所に，数年前から気になっている立ち食い蕎麦屋があるのだ．店の名を『立喰そば新橋駅ポンヌッフ店』という．
　「立食」そばでなく「立喰」と書くこだわりがあるならば「立喰蕎麦」とすれば納得も行くが腰砕けに「立喰そば」である．それはまあよしとして，この「立喰そば」は書体の大きさから推定すると『新橋駅ポンヌッフ店』よりも小さく，店名の一部ではあるが「冠」らしい．店の名前は『新橋駅ポンヌッフ店』なのである．
　しかし普通，例えば『小諸そば秋葉原店』とか『ビックカメラ西新宿店』と書けば『小諸そば』や『ビックカメラ』が店名・社名であり「秋葉原店」「西新宿店」は店舗毎に付けられた名称である．
　それからすると「ポンヌッフ店」は店舗名であり，実は屋号，店名は『新橋駅』であることになる．すなわち新橋駅改札口を出てこの蕎麦屋に入ると，また新橋駅に入ったことになってしまうのである．そうすると新橋駅を出る時に客が「ごっそさんっ」と言うと店員が「ありあとあんしたぁ～」とか言うことになる．しかし東京駅を出る際にＪＲ利用者が「ごっそさんっ」と言って駅員が「ありあとあんしたぁ～」と言うのを私は見たことがない．品川駅でも田町駅でも同様だ．しかるに新橋駅のみ「ごっそさんっ」「ありあとあんしたぁ～」なのである．何言ってんのか自分でもよくわからないが，まことに憂慮すべき事態と言わざるを得ない．

　突然であるが「ポンヌッフ」とは何か．ネット上の資料によると仏語で「新しい橋」の意であるが，固有名詞としてはセーヌ川に架かる橋の一つであるという．これから転じて菓子の一種やフライドポテトを意味するようになったようである．
　それが何故に立ち食い蕎麦の店舗名に使われているかというと一目瞭然，新しい橋＝新橋というわけなのだ．つまり『新橋駅ポンヌッフ店』は『新橋駅新橋店』なのである．『新橋駅』には店舗がいくつかあって，『新橋店』はそのうちの一つなのである．他の店舗がどこにあるか知らないが，例えば有楽町にもあるとしよう．すると私達はタクシーに乗った時に「新橋駅に行ってください」と言うと，運転手が「新橋駅は新橋のですか有楽町のですか」と聞き返されてしまうことになるのである．しつこいようだが，まことに憂慮すべき事態と言わざるを得ない．

　さて『立喰そば新橋駅ポンヌッフ店』でイカ天蕎麦を注文したら「トッピングサービス券」を一冊(12枚綴り)をくれた．次回からこのサービス券を使うと，かけ蕎麦に生卵，ミニコロッケ，天かすのいずれかを無料サービスしてくれるという．
　この大盤振る舞いサービス券の表紙には『立喰そば新橋駅ポンヌッフ店』と書いてあり，それはいいのだが，左の画像では小さくて見にくいけれど店の場所を記した略図中には何と『立ち食い蕎麦新橋駅ポンヌッフ店』としてあるのだ．この蕎麦屋の主人は一体何を考えているのであろうか．くどいようだが，まことに憂慮すべき事態と言わざるを得ない．

　前置きが長いのはいつものことだが，話は本題に入る．この蕎麦屋の蕎麦つゆは非常に濃い(塩っぱい)．麺は茹でてからかなり長時間経ったものと思われた．せっかくのサービス券であるが，使うことはないだろうと思った．
(ちなみに店の外観はこんな感じ)

卵かけ御飯

　一口に卵かけ御飯といっても各人各様の流儀があるのは周知の通り．先週の毎日新聞『山本さんちの台所』に，頂き物の良質の卵を食べる話がでていて，文中に卵がこぼれないように大振りの飯茶碗を用意するとあったから，山本ふみこさんちは飯の上に卵を割り落とすやり方であるのだろう．
　卵かけ御飯についてはWikipedia『卵かけご飯』が笑える．筆者の皆さん，他人が書いた記事に満足できず自分の蘊蓄を大まじめに傾けるのだが，結局同じことの繰り返しになってしまっているのが微笑ましい．
　「大まじめであることのおかしみ」もあって，例えば
《卵かけご飯が朝食時に摂られることが多い理由は、第一に短時間で食べ終わることができる点である。この理由は、飯に生卵を加えることで、炊いた米特有の弱い粘り気が減り、米粒一つ一つが分離して流動化し、流し込むように掻き込んで食べることができるためである。このため、たとえば前日の酒量がたたって、食欲不振で昼食までの間に必要とする量が摂れない気分の時でも、流し込むように食べることができ、多くの量を摂ることができる利点がある。》
　引用中の《米粒一つ一つが分離して流動化し》といった辺りに筆者の科学的姿勢が感じられる．だが《前日の酒量がたたって、食欲不振で昼食までの間に必要とする量が摂れない気分の時》には，そもそも昼まで何も食わなくても大丈夫なのであるからして，《流し込むように食べることができ、多くの量を摂ることができる》のはむしろ体に悪く，全然利点でないことに読者は注意してこれを読むべきである．

　私はといえば，まず小鉢に卵を割り入れ，殻座を取り除き，醤油を入れる．醤油を数滴などという人もいるが，私は血圧が上がりそうなくらいタップリ入れる．文句あるか．ありません．
　よーく卵をときほぐしたら，熱い飯にぶっかける．卵の量に対して飯は少ない．飯が多いとかき混ぜているうちに卵が半熟状態になって粘度が上昇し，サラサラ感が失われてしまう．これに対し，卵の量が多いと米粒一つ一つが分離して流動化し，流し込むように掻き込んで食べることができる．このため例えば前日の深酒で二日酔いとなり，食欲不振で昼食までの間に必要とする量が摂れない気分の時でも流し込むように食べることができ，多くの量を摂ることができる利点があるのである．こらこら．

金木犀

　毎日新聞の金曜日には野坂昭如のエッセイが連載されている．今日の書き出しは，金木犀と犬の話だった．
　飼っていたハスキー犬が金木犀が好きだったのだそうだ．花が散る時に樹の下でじっと動かず，その頭に金木犀の花がつもって花の冠のようだった．その犬はいつの間にか野坂家をふらりと出ていったまま帰らず，金木犀の季節になるとその犬を思い出すのだという．
　飼い犬，特に小型犬はハイテンションだととてもかわいいものだが，彼や彼女がいつもハイテンションかというとそんなことはなく，時折物思いに沈んでいるように見えることがある．
　うちにはトイ・プーの二歳の女の子がいて，目の前でおやつを見せびらかしたりすると普通はクルクル回って喜ぶのだが，たまに無反応のことがある．一所懸命ご機嫌を取っても私の目をちらと見て，顔をそむけたりするのだ．今日の朝刊を読みながら，今度そんな時には頭から花をふりかけてあげようかなと思った．

ゲームマシン更新

　同僚のＮ君がＰＣを新調したいと言う．もうすぐ定年になるが，いざそうなったら大きな買い物はし難いから，現役のうちに買っておくのだとのことである．同感同感．

　私がいま使っているＰＣはGIGABYTEとASUSのベアボーンを基に自作したものである．
　ASUSのやつは文章を書いたり画像編集したり，あるいは多少は仕事でMS Office2007を立ち上げたりしている．
　GIGABYTEのは，ゲームマシンだ．といってもグラボはELSA GLADIAC 743GTという何世代も前の骨董品みたいなものが入れてある．GPUはGeForce6600だ．
　GLADIAC 743GTのリリースは2005年．当時は二万円もしたミドルレンジグラボで，つい最近までこれで満足していたのだが，雲行きが変わった．
　ここ一年ばかりネトゲの“World of Warcraft”をやっていた．愛機のGLADIAC 743GTはまったく問題なく描画をこなした．
　これに飽きて最近，去年だったかに発売されたシングルプレイRPGの“TITAN QUEST”を購入してプレイしてみた．いわゆる“DIABLO型RPG”で，見た感じは“DIABLO 2”みたいな作品である．ところがこれがアカンのである．遊べないことはないが，低画質モードにしても描画にモタモタ感があってストレスがたまるのである(推奨条件はGeForce6800以上なので，わずかに及ばない)．
　ドライバの問題かも知れぬと思って最新のドライバに置き換えてみたが，多少は良くなったものの決定的改善は見られなかった．
　これだけならいいのだが，実は一年か二年後に“DIABLO 3”が出るかも知れないのであるね．これは是非買ってプレイしたい．多くのおっさんゲーマーもそう思うだろう．だが恐らく“TITAN QUEST”でも動かないGeForce6600では歯が立たないのではないか．

　で，決心した．ゲームマシンを更新するぞ．

事業者の責任あるいは良心

　(株)マンナンライフが『蒟蒻畑ポーションタイプ』(以下『蒟蒻畑』)の製造中止を発表してから十日ほど経った．それでこの件をググってネット掲示板を見てみたら，『蒟蒻畑』と餅を一緒くたにして，野田消費者行政担当相を非難する書き込みが多いのに呆れた．ネット上には『蒟蒻畑』製造中止反対署名運動まで起きているそうである．

　食品を原因とする窒息事故例(2006年)は餅が168例で，『蒟蒻畑』類似のカップ入りこんにゃくゼリーは11例であったことを根拠に，餅の方が危険であると言う人間がいる．先週の週刊文春にもそんなことが書いてあったが，実に程度の低い理屈である．少しは確率ってものを考えたらどうか．
　全日本菓子協会のデータによると，カップ入りこんにゃくゼリーの売上げは2007年度に約100億円で，その約３分の２がマンナンライフ社であるという．これに対し，サトウ食品一社の包装切り餅の売上げだけで2007年度に135億円あるのである．同業他社の包装切り餅および和菓子等の餅類似食品も勘定に入れた市場規模はその一桁上のはずであり，従って市場規模から推定される窒息事故の危険性は，カップ入りこんにゃくゼリーも餅も似たようなものではないかと思われる．
　さて話はそこからだ．私は『蒟蒻畑』を一度しか食べたことがない．食って「なんだこれは」と思ったからである．
　こんにゃくは，煮込みのおでん，味噌田楽，きんぴら炒め，各種鍋の具(しらたき，糸こんにゃく)など色々なおいしい料理法がある．中でも私は玉こんにゃくを醤油で炒りつけたものが好物である．これで焼酎ロックをクイと飲むと実にこう何というか良い塩梅である．
　そんなことはどうでもよい．こんにゃくの食べ方は伝統的なものだけで充分で，しかもそれらは『蒟蒻畑』よりも食い物として上等ではないかと言いたいのである．何を好んでわざわざポーションタイプの，ツルンと吸い込んで窒息してしまいそうな形状のものにせにゃあかんのであるか．
　『蒟蒻畑』が製造中止になったところで私は何の痛痒も感じないし，我が国の食文化に微塵の影響もないだろう．しかし餅はそうはいかない．確かに餅を喉に詰まらせる事故はあるが，それで餅の食文化的価値を否定するわけにはいかない．野田大臣が言いたいのはそこだと思われる．

　だがそういう一般的なことより何より，自社の製品のために何人かのお年寄りや幼児が命を落としたことに対する，マンナンライフ社(だけではないが)の鉄面皮なまでの鈍感さは一体どうしたことか．私はそのことに驚く．マンナンライフ社の経営者，技術者や品質担当者は，事故情報の公開に背を向けて，それで良心の呵責に責めさいなまれることがなかったのであるか．私なら耐えられない．

　食品安全基本法は，食品による事故の責任は第一義的に食品事業者にあると宣言している．その通りである．ネット掲示板に「こんにゃくゼリーが危険だとわかっていて子供に与えた親が悪い」などと書いている馬鹿者がいるが，親も悪いかも知れないが，しかしそれでもなお食品事業者が第一義的責任を負わねばならない．これが多くの食品原因事故を経て私達が得た結論なのである．

症候群 (2)

　グーグル検索結果リスト画面の上に書かれた「難病」の文字を，私は何秒も見つめていた．面白くないですか．すみません．

　でまあ結局，多形滲出性紅斑は，発疹が手足にとどまるか全身に及ぶかが重傷，難病の分かれ目らしい．診てもらった皮膚科の先生が「発疹は胸や胴にあるか」と訊いたのは，そういうことだったのである．重傷の場合は死に至る場合もあるそうだから「じんま疹が出た」などと見当違いをブログに書いてる場合ではなかったのである．
　この病気の原因というか発症の機序というか，つまり劇症化するかしないかの理由は何だろうか．少々調べたくらいではネット上の資料では分からなかったが，患者間に遺伝子レベルの違いがあるのだろうと想像しておく．
　原因ではなく発症の引き金はどうか．皮膚科の先生は「まず多いのは風邪のウイルスによる刺激，体調不良，薬剤アレルギーなどだが，不明のことも多い」と教えてくれた．体調不良なんてのも理由不明の仲間ではないかと思うが，わたしの場合は風邪の兆候が全くないので，体調不良で片付けられるのかも知れない．ウェブ上の資料には，ガンがきっかけになる場合もある，などと書いてあるが．

　処方された薬は以下の通り．
★プレロン錠 2.5mg；ジェネリック 医薬品の抗炎症剤，副腎皮質ステロイド[プレドニゾロン]製剤
★タリオン錠 10mg；選択的ヒスタミンH1受容体拮抗・アレルギー性疾患治療剤，ベポタスチンベシル酸塩[ベシル酸ベポタスチン]

　上のリンクでプレロンの禁忌病名に急性心筋梗塞の既往と書いてあるのが少し気になる．私は急性心筋梗塞ではなく狭心症の前歴があるわけで，その点で厳密には禁忌に触れていないのだろうが，バイアスピリンを毎日服用していますと自主申告したのに皮膚科医は「あ，そう」とあまり関心をを示さなかった．心筋梗塞の患者にもバイアスピリンを飲む人はいるのではないか．

　それを除けばその皮膚科の先生，三分間診療ではあったが要領よくこの病気を素人に説明してくれた．しかし一つだけ私に言わなかったことがある．多形滲出性紅斑は，若い女性が多くかかる病気だという事実である．なんかこうホルモンが関係してるんじゃないかしら．ほほほ．

症候群 (1)

　じんま疹になったと掻いてから十日経った．違います．書いてから十日経ったが正しい．
　最初は左右の手の甲に痒い発疹が出て，次に後頭部に出た．それぞれ三日間くらいで元に戻ったが，今度は両足の甲に発疹ができた．発疹にかゆみ止めクリームを塗ったら，痒みはとまったが，腫れ上がって，指の付け根にくびれができて，赤ちゃんの足指のようになった．右足は靴も履けないくらいに腫れた．
　これはいささか尋常ではないと思われ，ちょうど土曜日なので医者に行くことにした．
　私は健康保険証と病院の診察券を一つのカードケースに入れていて，総合病院，循環器専門医，普通の内科，耳鼻科のそれが収納されている．あんまり滅多に行かない診療科の診察券を増やしたくないので，大船にある総合病院に行くことにした．冠動脈にステントを入れてもらった湘南鎌倉総合病院だ．

　朝九時少し前に着いて受け付けで保険証を出し，皮膚科を受診したい旨申し出たら，皮膚科は土曜日休診だという．ぐわ．
　それで藤沢駅の近くにある掛かり付けの耳鼻科(花粉症でお世話になっている)のビルの二階に皮膚科があることを思い出し，そこに行くことにした．
　湘南鎌倉総合病院からタクシーに乗り，藤沢の皮膚科医院に着いたのが九時十五分頃であった．ところがこちらは窓口に診察は十時からと書いてある．それならばタクシーなんか使わずに電車で来たのにと思った．ぐわあ．
　休みの土曜日だし，まあいいやと藤沢駅のキオスクで新聞を買い，駅ビル一階のBecker'sでコーヒーを飲みながら時間をつぶした．

　さて前置きが長いが，皮膚科の先生に診てもらった結果は『多形滲出性紅斑』とのことであった．じんま疹とは違うんですかと質問したら，似たようなもんだとの回答．胸とか胴体に発疹はあるかと訊かれ，それはないと答えたら，治療はじんま疹と同じ抗アレルギー剤と抗炎症剤で行う，一週間後にまた来なさいと言われた．
　帰宅して『多形滲出性紅斑』をググっててみた．
　一番先頭のタイトルは《多形(滲出性)紅斑、スティーブンス・ジョンソン症候群》である．スティーブンス・ジョンソン症候群か．症候群て名前の病気あまり好きじゃないなあ．で二番目のヒットが《多形滲出紅斑》で，これはそのまんまである．そこまではいいのだが，三番目に《難病情報センター｜重症多形滲出性紅斑(急性期)特定疾患情報》てのがあった．難病，重症，急性，特定疾患……　追い打ちをかけるようにタイトルの下に
《重症多形滲出性紅斑（急性期）とは. 口唇・口腔、眼、鼻、外陰などにびらん（ただれ）が生じ、全身に紅斑、びらんが多発する疾患群です。 ...》

　外陰にびらん，て…糜爛糜爛糜爛糜爛糜爛糜爛，ぐわあああ．(続く)

アニメ歩数計

　いつ頃からかよく知らないが，ロングセラー文庫本の末尾に，例えば新潮文庫の例だと
《なお本作品集中には、今日の観点からみると差別的表現ととられかねない箇所が散見しますが、著者自身に差別的意図はなく、作品自体のもつ文学性ならびに芸術性、また著者がすでに故人であるという事情に鑑み、原文どおりとしました》などと書かれている．昔の文学作品を対象にした「言葉狩り」に対する出版社側の防御であろう．

『復活の日』の初版は昭和三十九年であった．私がこれを読んだのは大学一年生の時だ．その頃の私はＳＦが好きで，星新一や筒井康隆，小松左京を読み漁ったのを思い出す．
　自作に対する言葉狩りに怒って一時期筆を断ったのは筒井康隆であるが，小松左京の『復活の日』は，発表のかなり後になってから，言葉狩りどころか作品の内容自体が非難された．この物語で猛威をふるった生物兵器が死滅したあと，南極の基地で生き残った人類の大半が男であったため，女性は「人類の復活のために」強制的に産む性として位置づけられる，という設定がである．そして，草刈正雄の主演で『復活の日』がリリースされたのは昭和五十五年であるが，その時も同じ非難が繰り返された．
　もともとＳＦは思考実験という面があるのだから，極限状況を想定して描かれた人間の行動について論難しても意味がないと私は思ったものである．ただし，その《今日の観点からみると差別的》な設定には必然性がないと思われ，私は疑問に思っている．南極基地の女性数がもっとずっと多いという設定にすれば，この非難は回避できたと思うし，その方が遺伝子の多様性が確保できるから，人類復活の可能性は高まるし．
　とまあそんなこともあったのだが，『復活の日』は日本ＳＦの古典的名作ではある．映画『復活の日』の方の評価はよく知らないが，主演の草刈正雄がぼろぼろになって南に歩き続けるシーンを覚えている団塊おじさんは多かろうと思う．

　前置きが長いが，話は昨日(10/7)の毎日新聞に出ていたバンダイの新発売アニメ歩数計である．二種類あって，『母をたずねて三千里』と『宇宙戦艦ヤマト』である．『母を・・・』はドット絵の主人公マルコの歩く姿がかわいい．これを着けて歩くと「ブエノスアイレスまであと何歩」とか表示されるそうである．
　それはそれでいいのだが，健康のために歩数計を購入する層には中高年のおっさんがかなりいるんではないか．それだったら『宇宙戦艦ヤマト』より『復活の日』がウケるのではなかろうか．画面の南に歩くぼろぼろの草刈正雄と「南極まであと何歩」を励みに毎日ウォーキングするわけである．だめかなあ．
(余談だけど映画『復活の日』にはもう一つ非難があって，それは「海の上を歩いて南極に行ったんかっ」というツッコミだった)

常套句

　今朝の読売新聞『編集手帳』(10/7 2:02)の末尾から引用する．
《「たのしい部屋」であるべき睡眠を「くるしい部屋」として過ごしている人たちに、朗報の始まりとなればいい。》

　問題はこの《となればいい》だ．これはもう新聞コラムの悪習といってもいい常套句なのである．『天声人語』だろうが『余録』だろうが一緒．全体としてどんなにいいコラムでも，末尾がこれだと台無しだ．各紙のコラム筆者達はこの言い回しの陳腐さに気がついていないと思われる．それくらい頻繁なのである．

かゆみを止めて

　今日も休日出勤だった．このところずっと週休一日である．会社のクールビズ期間が終わり，ネクタイを締めて通勤するようになってから今日が一番体感で暑かった．

　先週の水曜日に，じんま疹になった．頭が惚けて手書きで蕁麻疹と書けないので，正直にじんま疹と書くことにする．
　そのじんま疹だが，私はアレルギー体質なので，皮膚を強く掻いたときに，一時的に痒くないじんま疹様の状態になることはしょっちゅう有るが，何日も続く本物のじんま疹は生まれて初めてである．
　発症部位は手の甲と足首，それと頭皮．不思議なことに背中や胸，腹部は何ともない．今日も鞄の中に池田模範堂製『かゆみ・赤みにすぐれた効きめ　虫さされ・かゆみに　新エミリエントクリーム　15g』を入れて会社に行き，痒くなるとこれを塗布した．
　新エミリエントクリームには酢酸デキサメタゾン，塩酸ジフェンヒドラミン，クロタミトン，グリチルレチン酸等の錚々たる痒み界の重鎮が配合されている．戦前の昔から痒みといえば池田模範堂なのである．藤田まこと監督率いる池田模範高校が夕焼けの甲子園で「ム～ヒ～が岡にかゆみを止めて～」と歌った，あの池田模範堂なのである．
　しかし新エミリエントクリームの奮闘虚しく，とにかく痒い．「今まで生きてきた中で一番幸せです」と語ったのは岩崎恭子ちゃんであるが，おじさんは今まで生きてきた中で一番痒いです．突然に岩崎恭子ちゃんであるが，他意はない．そうですか．