『北村薫のミステリー館』
この数日,ものすごい花粉飛散のせいで鼻水分泌しまくりだった私は,耳鼻科にでかけた.十一時少し過ぎに着いて受付に診察券を出したら「午前中の受付はもう終わりました」と言われてしまった.私の順番は午後二時半頃だという.自宅に戻って出直すには中途半端で,まあ休みの日に街中をふらふらするのも久し振りなので,駅の近くで時間を潰すことにした.
キオスクで毎日新聞を買い,Becker'sに入って隅から隅まで読み,これで十二時を過ぎた.
それから昼飯を食いに回転鮨へ.コータリほどは食えぬとしても,どれくらい食えるか試してみたのだが,八皿でギブアップ.若い時は二十皿は食えたのに,としみじみ.
次に時間潰し向きの本を探そうと有隣堂書店に行き,アンソロジィ『北村薫のミステリー館』(新潮文庫)を購入した.これを持って喫茶店へ.
『北村薫のミステリー館』は巻末に北村薫と宮部みゆきの対談が載っている.短編を一つ読んでは,北村・宮部の対談を読んだ.
最初に収録されているのはウィリアム・スタイグの『きいろとピンク』で,これについて北村薫がこう話している.
《私はこのスタイグという人を全然知らなかったんです。この新装版の絵本を、去年の夏、書店の平台で見つけて手にとって、へーっとびっくりしちゃました。この方はディズニーの『シュレック』の原作者なんです。(中略)映画になったディズニーのものとはだいぶ違うようです》
いうまでもなく,アカデミー長編アニメ映画賞受賞第一作『シュレック』はディズニー映画ではなく,ディズニーを辞職したジェフリー・カッツェンバーグが旧友のスティーヴン・スピルバーグ,デヴィッド・ゲフィンと設立したドリーム・ワークスSKGの作品(2001年)である.
北村薫ともあろう人がこれはどうしたことか.驚きつつ奥付を見ると,平成十七年十月一日発行となっている.第一刷だ.たぶんこの対談の時点では北村薫も宮部みゆきも『シュレック』を観ていなかったのだろう.今頃は誤りに気がついているかも知れないが,そんなに売れる本とも思われないから増刷なしで,訂正なくこのままになってしまうかも知れない.それにしても北村薫の勘違いを,新潮社の編集や校正の誰も気がつかなかったのか.
ネットはどうなっているか調べてみた.誰もこの間違いを指摘している様子がない.それどころか北村薫の間違いをそのまま引用している人がいて,困ったものだと思った.
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