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2008年3月 8日 (土)

君と一緒に

 小学校低学年の時のある日,父親が書店に連れて行ってくれた.何でもいいから一冊買ってくれるというのである.そこで私が選んだのは,確か『旧約聖書物語』という本だった.
 それは,小学生向けとしては活字が一杯で,読むのに時間がかかりそうだった.せっかく買ってもらうのだから,楽しみが長持ちする方がいいと,子供の私は思ったのだろう.
 その本には挿絵頁がところどころに入っていて,その中の一つがノアの方舟を描いたものだった.
 方舟はとにかくものすごく巨大な船で,それに世界中の様々な生きもの達が乗り込む様子を描いた絵だった.牛馬はいうに及ばず象とかライオンとか鳥,虫,蛇などが地平線の果てから長蛇をなして粛々と方舟に乗り込む光景であった.
 やがて大洪水が退いたあと,神はノアに,もう二度と私はこの世の人々を滅ぼすことはない,その約束の証として天に虹をかけようといわれた.そして天の虹の下を,生き延びた鳥や虫や獣達が繁栄の地を求めて歩き去っていく.その挿画を今も覚えている.

 さて生けるもの達が続々と方舟を去ったあともノアの足許にとどまった者達がいた.それが犬と猫である.ほんとである.私は本気でそう信じているのだ.

 『犬と私の10の約束』は毎日新聞の連載小説だったが,犬関係では現在,森絵都さんが『君と一緒に生きよう』を同紙に連載している(トップページ>ライフスタイル>森絵都の「君と一緒に生きよう」).これは,捨てられた犬と,それを救う人々を取材,紹介する読み物である.
 この心温まる連載の第12回『マレアと7頭の子犬たち(上)』(3/7) から引用する.
《私がここで取りあげているのは、年間数十万頭と捨てられ、葬られていく犬たちの中の、ごくごく稀な一例にすぎない。
 捨てられた犬は死ぬ。それはもう目を覆うほどの高率で。
 マレアと7頭の子犬たちの話も、だからどうか奇跡の一つとして受けとめてください》

 捨てられた犬は死ぬ.それはもう目を覆うほどの高率で.仮に生き延びても,人が捕獲し,葬る.この事実に,私は嘘でなく涙ぐむことがある.人類と一緒に生きてきてくれた友に,私達はどうしてこんな酷いことをできるのだろう.

 うちの近所で捨て犬があった.人伝に聞いたところでは,空き地に鎖で繋がれていたのだそうだ.これは「捨てる」というよりは「殺す」に近い.
 この捨て犬を見つけたおばさんは,あちこち犬を飼える人を探したが見つからず,結局自分のうちで飼うことにした.
 それから数日後,首から鎖を引きずりながら餌を探して歩いている別の犬を見かけたという噂を聞いた.捨てられた犬は二頭だったようである.鎖を自力で外した方の犬は,それからどこにいったのだろう.生きて,誰か優しい人にめぐり会えたならいいのだが.

 私んちのトイプードルは,今一歳半で,やんちゃな盛りである.私がブログの原稿を書いている時になど,何だか視線を感じて横を見ると,小首を傾げて私を見つめていたりする.おいで,と言うと,もう全身でうれしいうれしいと言いながら走ってくる.そして私は,足許にころがってきた小さなものを抱き上げ,君と一緒に生きよう,とささやく.

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