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2008年1月22日 (火)

十八の春の

 昨日の朝日新聞『天声人語』に,ホテルが受験生向けに高額の宿泊プランを用意しているとの話題が出ていた.寝坊して遅刻しないように部屋まできて起こしてくれるとか,中には一泊約14万円のスイートルームなんてのもあるようだ.
 天声人語子の受験は三十余年前だというから,私よりもお若いのだが,それでも《わが30余年前は、だいぶ違った。東京の古びた旅館は4、5人の相部屋だった。すぐ打ち解けあって色々話をしたが、ひとりがひどい寝言持ちで悩まされた。数日で別れたきり、互いの合否もその後も知らない、18の春の一期一会である》とあるから,私の頃と同じである.古びた旅館とは,たぶん本郷界隈の受験生宿であろう.
 私の場合は,高校の時の,それほど親しいというわけでもなかった友人と二人で渋谷の旅館に泊まった.私はもちろんのこと,私の親も旅館に泊まるなどということは経験がなく,予約をどうしたらいいか分からない.それでその友人の母上が手配をしてくださったのだ.一人よりは二人の方が親としてはもちろん安心である.うちの子をよろしく,と頭を下げられたが,心細いのはこっちも同じで,ありがたく同宿させていただくことにした.宿の手配をしたのが受験生宿の多い定番の本郷でなく渋谷なのは,一次試験会場が井の頭線沿線だったからである.友人の家は医院で,私が育った田舎町では上流階級だったから,宿泊の手配なんぞは造作もないことだったと思う.

 一次試験の結果は,私は合格したが,友人は不合格だった.彼は浪人となったが,私は東京で生活することになったせいもあって,高校卒業後は疎遠になってしまった.彼がその後どこかの大学に入ったという知らせはなく,二浪の後に家出したという噂を聞いた.
 人生のどの時期でもない《18の春の一期一会》には切ない響きがある.渋谷の旅館で彼と同宿したのを一期一会というのは正確な言葉の使い方ではないだろうが,私は受験シーズンになると彼のことを思い出す.その旅館がどこら辺にあったのか,今はもう思い出せない.

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