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2003年12月23日 (火)

沖縄旅行ノート(2)

 私の中学高校時代の同級生でI君という人がいた.
 彼は今でいう軍事オタクで,彼の家に遊びに行くと,雑誌『丸』がたくさんあり,大は戦艦から小は銃器に至るまでその知識は大変なものだった.私は,なんでこの人は,こんなしょうもないことに異常な関心があるのだろうと思ったものだ.
 彼は高校に入った時から進路は防衛大学校と決めていて,その通りに進学した.今はたぶん自衛隊の幹部になっているのだろう.
 この種の人達は一般の自衛隊員と異なって最初から幹部候補生だ.専守防衛の理念を堅持している人も中にはいるだろうが,I君のような,いわば戦争好きなのも紛れ込んでいるだろうと思う.
 小泉首相や石原都知事,公明党の神崎代表 (どこが平和の党なんだか) のようなのに比べれば,I君はそれでも自ら戦場に身を置くつもりだろうから,後方から兵を動かすだけの連中よりマシだとは思うが,それでも戦場ではどう感じるだろう.実戦の砲弾,銃弾の中に身をさらす前線の一兵卒に比較すれば,恐怖感は少ないのじゃないだろうか.

 こんなことを書いたのは,ウェブ検索で元毎日新聞の岩見隆夫氏が書いたコラムを見つけたからである.
 毎日新聞と氏のサイトに掲載されている2001年7月15日付のそのコラムは高倉健主演の東映作品『ホタル』について書かれたものであるが,中に沖縄戦のことが少し出てくる.一部を下の《》に引用する.

一方の沖縄地上戦では、軍人、県民あわせて十八万八千人が死んだ。戦跡の一つである〈旧海軍司令部壕〉を案内してもらった。那覇空港から車で約十分、那覇港を見下ろす眺望のいい高台にある。
 持久戦を続けるための地下陣地で、四千人の兵士が収容されていたが、一九四五年六月十三日、玉砕した。その一週間前、大田実司令官(少将)がこの壕から最後の電報を海軍次官あてに打っていた。県民がいかに献身的に戦闘に協力したかを記したあと、
〈沖縄の実情は言葉では形容のしようもありません。一本の木、一本の草さえすべてが焼けてしまい、食べ物も六月一杯を支えるだけということです。県民はこのように闘いました。県民に対して後世特別のご配慮をして下さいますように〉
 で電文は終わっている。
 昨年七月の沖縄サミット開催に情熱を注いだ小渕恵三元首相は、健在のころ、大田司令官の電報のことを知り、
「サミットが返答だな」
 ともらしていたという。小渕さんは政治家として〈後世のご配慮〉の一端を果たしたいと執念を燃やしたものと思われる。

 そして岩見隆夫氏は,小泉首相の靖国神社参拝の是非論について
俗世の私たちは、ひたすら鎮魂のお祈りをする、ということでいいではないか。理屈はいらない
とコラムを結んでいる.これから想像すると氏は,沖縄戦で自決した大田実海軍司令官の電報と小渕恵三元首相が取り組んだ沖縄サミットについて肯定的な評価を持っているのだろう.

 だが,沖縄サミットは,沖縄戦で亡くなった多くの人々にとって「後世特別のご配慮」になったのだろうか.
 大田司令官の電文 (一部) は次のようなものである.

沖縄県民ノ実情ニカンシテハ 県知事ヨリ報告セラレルベキモ 県ニハ既ニ通信カナク …… 本職 県知事ノ依頼ヲ受ケタルニアラザレドモ 現状ヲ看過スニ忍ビズ コレニカワッテ緊急御通知申シアグ …… 県民ハ青壮年ノ全部ガ防衛召集ニ捧ゲ …… シカモ、若キ婦人ハ率先軍ニ身ヲ捧ゲ看護炊事ハモトヨリ 砲弾運ビ 艇身キリ込隊スラ申シ出ルモノアリ …… 一木一草焦土ト化シ 糧食六月イッパイヲ支フルノミトイウ 沖縄県民カク戦ヘリ 後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ

 沖縄戦で日本軍は,海岸線で国民を守るために米軍の上陸を阻止するのではなく,上陸させてから沖縄県民を巻き込んで持久戦に持ち込もうとした.そして老若男女莫大な人的損失を出した.それが大田海軍司令官の電文にいうところの「沖縄県民カク戦エリ」の実態ではなかったか.戦場に置き去りにされ,『ひめゆりの塔』の直下の壕の中で死んで行かざるを得なかった少女達に「後世特別ノ御高配ヲ賜」ることなく,昭和天皇は昭和六十四年,遂に自らの戦争責任から逃げおおせた.
 そして我が国民は彼の死を悼んだのである.

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(本記事は,既に閉館した個人サイト《江分利万作の生活と意見》に掲載した文章の体裁をブログ用に整え,引用元のリンクを張ったものである)

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